特別寄稿 各界有識者による「2007年の回顧」と「2008年の展望」

[環境問題]

大野木昇司 氏 (日中環境協力支援センター 代表)

2007年の環境情勢を振り返る

中国の環境関連10大ニュース

 環境という切り口からみれば、中国にとって2007年は逆風が吹き荒れる年だった。しかしそれだけに、指導部の環境問題に対する認識が急速に深まったともいえよう。以下、07年の環境に関する特記すべきポイントを10大ニュース風に挙げてみたい。

  1. 中国共産党指導部が環境保護や省エネの重要性を明確に認識しだした。
  2. 太湖藍藻汚染事件など環境汚染がいっそう進み、五ヵ年計画の汚染削減・省エネ目標が以前予断を許さない状況となった。
  3. グリーン融資、汚染排出権取引、企業環境行為評価、環境ラベルなど環境経済政策がいっそう整備された。
  4. 区域認可制限(ある区域に深刻な汚染企業があれば、区域全体の新規事業の認可が停止される)、SEPA地方環境監督センター設置、汚染企業の貿易制限、グリーン・省エネ政府購入など環境行政政策がいっそう整備された。
  5. 気候変動対策に関する中国の態度が積極的に変わった。
  6. 第11次五ヵ年計画の環境計画や再生可能エネルギー中長期計画が定まるなど、この五ヵ年計画の環境・省エネの取り組みの大枠・方針が固まった。
  7. 地方や経済部門からの圧力も強く、グリーンGDPや計画環境影響評価が進められなくなった。
  8. 中国版RoHSの枠組みが作られるなど、世界と歩調を合わせた環境対策が進んだ。
  9. 「ダンボール肉まん」や中国製玩具の鉛問題など、中国の品質・安全性の問題が国内のみならず海外でも大きく取り上げられた。
  10. 産業投資熱が冷めず、生産能力が拡大して資源・エネルギーの需要も拡大した。しかしその一方で、バイオマス・風力・太陽エネルギーなど代替エネルギー開発や省エネ・リサイクルに積極的な取り組みが目立つようになってきた。

2008年の環境情勢を展望する

環境意識が地方にも浸透するか

イメージPhoto 中国の環境情勢を論ずるなら、五カ年計画や中長期計画を踏まえる必要がある。08年は第11次五カ年計画の折り返し点であり、前2年の実績を踏まえて後2年の動きを決める年でもある。前2年の環境情勢は必ずしも目標の2/5を達成できたとは言えず、厳しい情勢にある。このままでは、第10次計画時と同じく環境目標を達成できなくなる可能性がある。政府としては、経済措置、行政措置など様々な策で汚染問題に対する締め付けを強化していくであろう。

 08年の環境に関する大きな動きとしては、第一に北京五輪がある。北京五輪に合わせて大気・水対策・クリーンエネルギー・緑化など各種の環境公約を履行してきたわけだが、その成果が問われることになる。しかも今までと異なり、その成果を評価するのは中国政府・国民ではなく全世界の人々である。世界からの「環境汚染のひどい国」というレッテルを回避できるか、五輪後の環境対策に変化があるかという点は注目に値する。

 第二に、法整備や環境関連機構改革である。「循環経済法」、「エネルギー法」といった基本法が制定される予定であり、またエネルギー省や環境保護省の設置議論について一応の決着が図られる予定である。そもそもこの五カ年計画では、中央だけで約100の環境法律法規類、約1000の環境規格基準類が定められる予定であり、日系企業はしっかりフォローする必要がある。また中央の対環境・省エネ意識が、遅ればせながらも少しずつ地方に浸透してきていることから、地方の姿勢がどれほど積極的になってくるかも注目すべきポイントになろう。

大野木昇司
大野木昇司(おおのぎ・しょうじ):日中環境協力支援センター 代表
大阪府出身。京都大学工学部衛生工学科卒、京都大学大学院エネルギー科学研究科修士課程修了、北京大学環境学院修士課程修了。天津日中大学院環境管理学科の専任講師、国土環境株式会社北京事務所技術渉外主任(社団法人海外環境協力センター客員研究員兼任)を歴任。2005年に日中環境協力支援センターを設立し、中国環境アナリストとして日本企業・団体の対中国環境事業支援を行っている。
[ウェブサイト] 日中環境協力支援センター
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