今を楽しみ、将来に備えるために「シカク」(保険の機能)と「サンカク」(積み立て貯蓄)を上手に組み合わせる方法を探して、社会保険労務士でもあるファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんと、具体的な金融商品の活かし方について考えていきます。

 井戸さんは、若い頃から積み立て貯蓄を習慣化することを提案しています。「リスクを低減させるために分散投資をすすめます。資産分散と時間分散を行なう上で、投資信託の積み立ては有効な手段になります」といいます。井戸さんに聞いた「投資信託の積み立て」についての考え方は、以下のとおり。

3000万円を自動的に貯める投資方法とは

お金を増やそうとすると、どうしても「リスク」を取らなければならないということになるのですね。せっかく、積み立てても取り崩すときになって、積み立てた金額が目減りしていては困ります。

 リスクを低減させる方法のひとつが「分散投資」です。分散投資とは、「運用対象の分散」と「購入タイミングの分散」があります。

 運用対象の分散は、値動きなどの商品特性が異なる複数の運用商品に資産を分散し、ある商品の値下がりをほかの商品の値上がりでカバーしようというものです。

 購入タイミングの分散は、一番安く買って、一番高く売りたいと誰もが考えます。しかし、個人投資家が投資タイミングを的中させるのは不可能です。一度に買って、翌日価格が大幅に下がってしまったら後悔するでしょう。価格の値動きは誰にもわかりません。購入タイミングを分散する、つまり毎月積み立てて時間を分散することは、価格が下がっているときは多く購入できるチャンスともいえます。

 投資信託の積立は、運用対象を分散し、毎月一定額を積み立てていくという長期、分散投資です。リスクを低減しながらお金を増やす方法のひとつと考えられます。

分散投資といっても、具体的にはどのように分散すれば良いのでしょう?

 投資対象は、世界中のさまざまな資産に分散投資しているものが良いと思います。日本、先進国、新興国だけに集中して投資をしているのでは、大きく値動きしてしまう可能性が大きいからです。

 たとえば、1996年から2010年まで15年間の資産クラス別の運用実績ランキングを見てみましょう。値上がり率の第一位は常に変動していることがみてとれます。将来なにが一位になるかわかるはずもありません。しかし、分散投資型ポートフォリオを見ると、9つある資産クラスの中で、ほぼ4位、5位になっています。つまり、他の資産クラスと比べると安定しているということがわかります。

運用実績ランキング

 分散投資にしておけば、チャート分析など使った売買のタイミングや銘柄選びに悩む必要がなくなります。ただただ積み立てていくだけです。分散投資は、1年や2年で資産を倍に増やすようなことはできません。反対に半分に減ることもありません。資産を何倍かに増やすような投資方法は、値動きの激しい資産へ集中投資することになります。年によって投資成績に大きなばらつきがあることは、長期で資産形成するには向きません。

 いままでの資産に加えて分散型ポートフォリオの投資商品を組み入れておくことは、持っている資産の分散にもなります。

運用の中身を調べるという他に、投資信託を選ぶポイントは?

 長期、分散投資についてお話ししましたが、もうひとつ大切なことは「低コスト」です。投資信託は、持っている期間中、毎日運用コスト(信託報酬)が差し引かれます。運用会社が投資先を選んで運用を代行してくれているので、そのための費用を支払っているのです。これが毎年、1年間で2%などと預けている資金の中から差し引かれます。運用を委託しているのですから、当然なのですが、同じような資産配分の投資信託に投資していても、信託報酬がずいぶんと違うものもあります。

 この信託報酬の違いは長期投資のうえでは、とても大きなマイナスになってしまいます。信託報酬が年1%違う場合、10年後のコストは10%の差ではありません。単純計算では10年で10%のはずが、複利運用なのでさらに差が広がっていき10%よりも大きな差となります。これは長期であればあるほど差がさらに開きます。

 家計の支出を厳しく見ていくのと同じように、投資信託を選ぶときにも、低コストであるかどうかも判断材料のひとつです。

低コストの投資信託というと、住信アセットマネジメントの「STAM」インデックスファンドシリーズや、三菱UFJ投信の「eMAXIS」インデックスファンドシリーズなど、ノーロード(販売手数料無料)で販売しているインデックスファンドがあります。インデックスファンドは、保有中にかかる信託報酬も低いという特徴があります。このようなファンドが積み立てに向いているということですか?

 インデックスファンドは、一般に信託報酬が低く設定されているので、投資信託で積み立てていくには、ふさわしいファンドだと思います。ただ、「日経225」のインデックスファンドだけでは、日本株に集中投資しているのと同じなので、他のインデックスファンドと組み合わせてバランス良く投資するようにした方が良いと思います。

なるほど。ただ、複数の投資信託を合わせて買っていくのは、面倒なので、最初から分散ポートフォリオの商品が管理しやすいかもしれません。そうすると、三菱UFJ投信の「eMAXISバランス(8資産均等型)」があります。あと、バランス型で探すと、セゾン投信の「セゾン・バンガードグローバルバランスファンド」というのもありますね。

 株式や債券を国内外に振り分けてバランス良く投資すると値動きも安定します。また、複利効果を最大限に生かすため、儲けは引き出さずに再投資しているほうが、積立期間が長くなればなるほど、雪だるまのように膨らんでいきます。そういう点に注目して、投資する銘柄を選ぶようにしましょう。

 私は以前、セゾン投信には子どもの名義で投資信託の積み立てができるようにもなっている投資信託があって、面白いと思いました。学資保険だと、万が一のときに保険でカバーできるというメリットがあるのですが、中途解約すると元本割れの恐れがあります。その点、投資信託だと元本の保証はないのですが、いつでも解約できるので、利便性は高いと思います。(おわり)

プロフィール

井戸美枝

井戸美枝

井戸美枝事務所代表
ファイナンシャルプランナー CFPR
社会保険労務士・キャリアカウンセラー

講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、資産運用、ライフプランについてわかりやすくアドバイスしている。経済エッセイストとしても活動中。「定年前後 困らないお金の付き合い方」(PHP研究所)など著書多数。